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この文字こう出す®カード

発音記号表記について

「ここカード」で採用している発音や発音記号のルールについての解説です。

お手持ちの辞書と比較した時や、上級者向けの指導時などにご参照ください。

​当カードは「日本人英語学習者が英語の音の区別をつける」ことを目指すものであり、

音声学上の正音を追求するものではないことをご理解の上、お読みください。

​また、辞書によって発音記号の表記が異なることにもご留意ください。

●音声学的にy/j/やw/w/は、調音の方法として完全な閉鎖を伴わないことから「半母音」と呼ばれたり、狭められた息の通り道が広がる動きの過程で生じる音であることから「移行音」と呼ばれることがあります。当カードでは、英語を外国語として学ぶ日本人が「音の区別をつける」という観点から、発音方法のポイントを把握しやすくするために、「子音」として扱っています。※1

※1 例えば year は「イヤー」でも/ɪɚ/でもなく/jɪɚ/である、また例えば wood は「ウッド」でも/ʊd/でもなく/wʊd/であることを理解するためには、/j/や/w/を「半母音」や「移行音」という出し方を定めづらい音として扱うより、「有声摩擦音」つまり「子音」として扱う方が、英語の音をしっかり把握することができると考えました。

 

●当カード文字面上部に記載の代表単語は、なるべく一音節の単語を選出しました。二音節以上の単語の場合、当該の音(文字)のある音節にアクセントが付いているものを選びました。ただし、er/ɚ/は、語末にあってアクセントが付いていないことがほとんどなので、例外です。本来/i/になる語末のy, eyも、同様に例外です。※2

●IPAでは、/iː/は/i/を時間的に長く発音することを表し、/ɪ/は/i/よりも口腔内が若干広く若干後舌であることを表します。辞書によっては/i/を/iː/、/ɪ/を/i/と表記しています。当カードでは/iː/と/ɪ/の2種類の表記に絞りました。/i/と/ɪ/の違いは、音色(おんしょく)そのものの違いである上に、意味弁別に大きく関わりますので、聞き分け・出し分けが出来る必要があります。しかし、/i/と/iː/とは音色は同じであって、単に若干の時間的長さの違いでしかなく(アクセント節では/iː/になり、非アクセント節では/i/になります)、意味弁別への影響は大きくありません。ならば、/i/=/ɪ/という誤解を生じさせかねないリスクを負って/iː/, /i/, /ɪ/の3種類の記号を載せるより、/iː/と/ɪ/の2種類の表記に絞った方が良いと考えました。※2 

 

※2 例えば lily は、/lɪli/と発音します。一つ目の母音は/ɪ/で、二つ目の母音は/i/ですので、それぞれ別の母音です。二つ目の母音が/i/であって/iː/でないのは、アクセントが付いていないからです。これを/lilɪ/と、前後の母音を逆に発音した場合には奇妙に聞こえる可能性が高いです。しかし、/lɪliː/と、語末を少し長めに発音しても、それほど違和感を持たれることはないでしょう。

●アクセントが付かないR音以外の母音は原則として全て曖昧母音/ə/になります。当カードでは、代表単語にlemon, the, elephɑntをあげていますが、lemon, elephɑntは、アクセント節以外の母音が/ə/になることを示しています。また、theなどの冠詞の母音は、通常はアクセントが付くことはないので、必ず/ə/になります(続く語の語頭が母音の場合のtheや、冠詞そのものに特別な意味を持たせる場合を除く)。

●IPAでは、/e/よりも口腔内が若干広く、舌の両脇奥が上の両奥歯に触れない音を/ɛ/と表していて、辞書によってはこの2種を表示しています。しかし、英語において/e/と/ɛ/の聞き分け・出し分けが出来ないことによって意味弁別に支障をきたすことは考えにくいので、当カードでは全て/e/に統一して表記しています。

 

●地域や年代によって/a/, /ɑ/, /ɔ/の使い分けにはかなりの差があり、実際には/ɒ/で発音されることも多いです。当カードでは、英語を外国語として学ぶ日本人が「文字と音とをセットで覚える」「音の区別をつける」という観点から、二重母音やR音がつながる母音は/a/、o の短母音は/ɑ/、al, au, aw の音は/ɔː/と表記することで統一しています。※3

 

●当カードでは、同じR音でも、/r/は子音扱い、/ɚ/は母音扱いの表記となっています。母音からR音へ移行する音は、R音までをまとめて母音として扱い、/aɚ/, /eɚ/, /ɪɚ/, /ɔɚ/と表記しています。/ɚ/は辞書によっては/ər/と表記されています。※3

※3 2020年11月発送分より、arは/ɑɚ/と表示しています。/a/も/ɑ/も非円唇の広母音(/a/が前舌、/ɑ/が後舌)で、日本語においては両者とも「ア」と認識されやすい音です。/ɑ/は実際には前舌(/a/寄りの音)から後舌まで幅広い音色で発音されており、arという綴りにおいて、/aɚ/と発音するか/ɑɚ/と発音するかで意味弁別に支障をきたすことは考えにくいです。er, ir, urの/ɚ/と混同されやすいarの発音を、日本語話者が区別をつけるためには「まずアと言ってから(舌を浮かせずに口を開けてから)R音に移る」ということに注力すべきで、そのアがどんなアであるか(オみたいなアなのかどうか)に気を取られない方が良いとの判断から/aɚ/の表示を選択していました。しかし、学習者がご自身で辞書を用いて発音方法を確認した時に、より多くの辞書で採用されている/ɑɚ/の表示を採用した方が、将来的にはより混乱が少なく済むとの判断に至りました。​ 

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